郷土ゆかりの企画展覧会
庄内の美術家たち15 稀代の文人 山口白雲

開催要項
会期2020年 2月8日(土) ~ 3月8日(日)
休館日月曜日
※ただし、2月24日(月・祝)は開館し、翌25日(火)は休館
開場時間9:00~17:30
※入場は閉場の30分前まで
観覧料一般200(160)円/高大生100(80)円/中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
内容

 郷土の芸術文化史をたどり、庄内にゆかりのある作家を紹介する展覧会「庄内の美術家たち」。シリーズ第15回となる今回は、言論人として、また政治家として活動するかたわら、蘭を描き続けた文人、山口白雲を紹介します。

 荘内藩政のなかで栄えた当地域では、明治維新を経ながらも市原円潭や加藤雪窓といった狩野派の系譜に連なる絵師や、服部五老と二柳に代表されるような南画家を輩出しました。しかしながら、明治初頭に隆盛した南画も、洋画の台頭とそれを受けた新日本画運動のなかで、大正から昭和初期までには衰退していくことになります。そうした時代の潮流のなかで、山口白雲は展覧会へ出品することを目的とせず、日々の営みとして水墨画に取り組み、とくに蘭を好んで描き続けました。

 山口白雲は、1886(明治19)年、西田川郡日枝村(のちの稲生村、現 鶴岡市日枝)に、山口壮弥と菅実秀の長女於石の三男として生まれています。本名を戌吉といい、祖父の山口将順は旧荘内藩主酒井忠発および忠篤のもとで重責を担い、次代に菅実秀を登用した人物として知られ、甥には画家の山口将吉郎がいます。また、のちに妻となった山口竹恵は、鶴岡家庭学院(昭和21年創立)や山口女学院(昭和27年創立、のちに鶴岡女子専門学校と改称)を設立し、女子教育に対する顕著な功労によって瑞宝章をうけた人物として知られています。

 1907(明治40)年、荘内中学校(現 鶴岡南高等学校)を卒業した山口白雲は、早稲田大学政治経済科に進学して上京。1911(明治44)年には同大学を卒業して帰郷し、1914(大正3)年に、「鶴岡日報」の創刊とともに主幹として迎えられました。言論人として保守主義を批判した革新的な健筆を振るい、西田川郡会議員となって政治の世界で活躍し、1923(大正12)年から1931(昭和6)年までは、山形県会議員を務めて、鶴岡市の市政施行や砂丘地開発に功績を遺しています。1933(昭和8)年に「鶴岡日報」を退職すると、月刊「新庄内」を創刊し、1944(昭和19)年に至るまで独自の論陣を展開していきました。

 晩年の山口白雲は、日々文筆や水墨画に取り組んでいたと伝えられています。今回確認したなかでは、最も古い作品の制作年は1938(昭和13)年です。主に独学であったといわれていますが、土屋竹雨との親交を伝える作品もあり、戦前からその周辺の人物たちと交友し、漢詩文と画を勉強していたことが推察されます。戯画的な作品も散見されますが、山水は珍しく、圧倒的に蘭を描いた作品が多く、画業における山口白雲の本領が蘭図にあったことは間違いありません。本展覧会では水墨蘭図を中心に、山口白雲の作品約40点を展覧します。

関連企画
  • ギャラリー・トーク
  • 内容当館学芸員が会場を案内し、作品解説を行います。
    日時2月16日(日)/3月1日(日) 各回 14:00~15:00
    申込不要、会場へ直接お越しください。(要観覧券)
主催鶴岡アートフォーラム/鶴岡市教育委員会
協力公益財団法人致道博物館